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小規模事業者持続化補助金(一般型)、公募要領変更の不可解さ

 

正式名称は、「令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金(一般型)」という長いもので、去る令和4年5月27日の第8回公募が終了。次回は9月12日までの第9回公募が始まっています。 因みに、第10回は12月上旬、第11回は令和5年2月中旬の予定。国の予算は国会で決定するもので、補助金関連の予算は補正予算で上積みされ、本補助金は4年越しということになります。コロナ禍の中で、令和2年度は「コロナ対応型」、令和3年度は「低感染ビジネス型」という枕詞を付けた持続化補助金の公募がありましたが、令和4年度は、「一般型」に戻った感じです。

 

元々、持続化補助金は、小規模事業者(個人事業主含む)向け、基本は補助金50万円のもので、設備投資、開発費、広告宣伝費など比較的利用できる経費の範囲が広いものでした。典型的な事業者のイメージは、飲食店、小売店、サービス業、町の工場、建設業などで、一人または家族経営若しくは従業員数人程度までです。 補助事業経費は、販路開拓や業務効率化などで、100万円前後の投資に対し50万円まで補助するイメージ。

 

令和2年度の「コロナ対応型」や、令和3年度の「低感染ビジネス型」は、コロナ禍による売上減少要件が加わり、補助金額は100万円と倍増したので、申請者が増えたようです。そもそも、経済産業省(中小企業庁)の補助金は、中小企業の生産性の向上に重点を置いた経済施策で、持続化補助金については「販路開拓等の取り組み」が主目的として、公募要領がちょこちょこ変わります。公募要領の変更は、毎回何十頁の公募要領を前回と比較しながら読む必要があります。

 

実は、前回第8回公募で大きく変わったのが、「ウエブサイト関連費」の新設。従来は「広報費」の中でHP作成やインターネット広告も計上できたのですが、そこから分離しされました。従来の「広報費」はチラシ、看板、雑誌広告、DMなど昭和時代からのアナログ世界の広報費のみになってしまいました。 そして、この「ウエブサイト関連費」は補助金交付申請額全体の1/4と上限が設けられました。 他の経費として、「機械装置等」「開発費」「委託・外注費」などがありますが、どういう配分の補助事業経費にするかは事業者の事業計画やその業界の特徴によるものでしょう。 なぜ、こんな1/4ルールを設定したかを推測すると、HP作成やインターネット広告を扱う業者が積極的なので、その経費だけの申請案件が増え過ぎたのでしょう。 しかし、今のネット社会では、HPを中心としたやネット集客が主流でしょう。「販路開拓」の方法としてネット活用が中心になることは自然です。 即ち申請する事業者によっては、「広報費」のほとんどは「ウエブサイト関連費」となってしまうことになります。無理やり、アナログ世界の広報に戻せといっているような気がします。 または、「広報費」分を減らし、「機械装置等」「開発費」を優先させようという意図なのか? 補助金交付申請額の3/4は「ウエブサイト関連費」以外にしなければならない合理的な理由がわかりません。 

 

7月に入って、第9回公募の公募要領(6月17日付)をチェックしたところ、非常にマイナーな部分なのですが、当職が驚いたのは、「開発費」の中にあった「業務システム開発に係る費用」が削除され、「ウエブサイト関連費」の中に「システム開発に係る経費」が出現したことです。ネットを使ったサービス業では、ネットで集客するだけでなく、アプリを開発し、サーバーに格納し、DBを構築し、ユーザーにクラウド型(昔はASPと呼んでいた)で利用させる方法が主流でしょう。そして、ネットを使ったサービス業が、発展・進化している成長分野であることは、もう何十年も前からの当たり前の傾向です。 

 

事務局に尋ねてみると、このようなネットを使ったサービス業のアプリ開発、DBなどのシステム開発などネットに繋がることすべては、「ウエブサイト関連費」とのこと。 いくら丁寧に一般的なITシステムのことや、CMSを使ったHPづくりやネット広告との違いを説明しても、まったく埒があきません。リモートワークやオンライン面談により非対面型ビジネスの定着により感染リスクをさげるのであれば、ネット関連の費用や開発が増えて当たり前ではないか? 

 

合理的に冷静に説明しているのに、「国が決めたルールです」(申請者は決めたルールを守れの意と解釈)の一点張りで返答されると、バカバカしくなってくるし、言葉が通じない世界は怖ろしいです。すべての事業者がこの懸念に引っかかる訳ではありませんが、たまたま当職は、ネット経由でユニークな新サービス業を立ち上げようとしている複数の事業者が、「創業枠」200万円を狙って支援を始めたところで、暗礁にぶつかってしまいました。

 

国(経済産業省)の経済施策の中で、中小企業支援を大きな柱の筈であり、コロナ禍の中で経済活動を活発化させるために、補助金総額の予算が膨れ、アクセスを踏み込んでいる状況だと理解しています。 しかし、同時に中小企業庁の役人や外注先である個別補助金事務局が、ローカルルールをひっそり変更し、急ブレーキを踏んでよいものなのか非常に疑問です。少なくとも、国民の誰もが理解できる合理的説明をすべきだと思慮します。

 

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